二億年前、ここは森だった
いまからおよそ二億年前、地質時代でいう三畳紀の後期。当時の成羽は、ユーラシア大陸の東の縁にあたる低い土地で、シダやトクサ、ソテツ、イチョウの仲間が生い茂る、湿った巨大な森だったと考えられています。恐竜がやがて栄えていく、その少し前の時代です。
やわらかな土に落ちた葉や幹は、泥に埋もれ、押し固められ、長い時間をかけて石の中へ閉じ込められました。それが、いまの成羽の地層です。
「成羽フローラ」― 世界が知る化石群
この地層から見つかる植物化石は、いまでは百十種あまり。おどろくべきことに、そのうち三分の一以上、およそ四十種が世界の新種でした。ここでしか見つかっていない植物が、これほど多い場所は珍しく、「成羽フローラ(Nariwa Flora)」の名で世界に知られています。かつて「中生代の化石のメッカ」とも呼ばれました。
葉の形、葉脈の一本一本まで、二億年前の森のようすが石の上にそのまま残っている——そう思うと、足もとの何気ない岩が、急に途方もない時間の入り口に見えてきます。
石にのこる、太古の葉
成羽の地層は「成羽層群」と呼ばれ、いくつもの層が積み重なってできています。海の近くの低地に、川が運んだ土砂と植物が層をなして堆積し、その環境が化石の宝庫を生みました。地味に見える灰色の石が、実は太古の森の一ページ——それが成羽の大地です。
成羽美術館で、化石に出会う
この貴重な化石は、高梁市成羽美術館で見ることができます。ここは「日本最古の森林植物化石」を常設で展示するとともに、成羽出身の洋画家・児島虎次郎の絵画や、彼が集めたオリエントの遺物も収める、少し変わった美術館です。太古の森と、近代の絵画と、遠い西アジアの記憶が、ひとつの建物で出会います。
情報確認:2026年8月 ※展示内容・開館時間・料金は変わることがあります。おでかけ前に、高梁市成羽美術館など公式情報での最新のご確認をおすすめします。化石の種数や年代には研究による幅があります。
🌏 この記事は特集「岡山の大地の物語」の一編です。/ 🗺 高梁市のエリアガイドもどうぞ。

