岡山の星空
― 美星、日本一暗い空のまち
「星が美しい」と書いて美星(びせい)。井原市のこの高原の町は、日本でいちばん早く“星空を守る”と決めた場所です。全国初の光害(ひかりがい)防止条例、そしてアジア初の星空保護区。なぜこの夜空はこんなに暗いのか――地形と、人の工夫の両方に理由があります。
星を「守る」と決めた町
きれいな星空は、たまたま残るものではありません。周りが明るくなれば、街の光が夜空を照らし返して星は消えていきます(これを光害といいます)。美星町(現・井原市)は、まだ多くの人が光害という言葉を知らなかった時代に、いち早く「星空を守る」ことを町の約束にしました。そして今、その努力は世界基準の“お墨付き”を受けています。
全国で最初に、光害と向き合った
1989年(平成元年)11月、美星町は 「美しい星空を守る美星町光害防止条例」 を定めました。夜空を明るくしすぎない、照明は必要な所を必要なだけ照らす――そんな考え方を町のルールにしたのは、全国で初めてのことでした。2005年に井原市と合併したあとも、その精神は井原市の条例に受け継がれています。星空は「見るもの」であると同時に、町ぐるみで「守るもの」になったのです。
アジアで初めての「星空保護区」
2021年11月、美星町は国際的な組織による 星空保護区(ダークスカイ・コミュニティ) に認定されました。これは暗く美しい夜空を守る取り組みが世界基準を満たした証で、この“コミュニティ部門”としてはアジアで初めて、国内の星空保護区としても3例目という快挙でした。長年の地道な取り組みが、世界の物差しで認められた瞬間です。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1989年 | 「美しい星空を守る美星町光害防止条例」を制定(全国初) |
| 2005年 | 市町村合併で井原市美星町に。条例の精神を市が継承 |
| 2021年 | 星空保護区(ダークスカイ・コミュニティ)に認定(アジア初・国内3例目) |
なぜ、ここの空は暗いのか
努力だけでは、ここまで暗い空は保てません。地形も味方しています。美星は、岡山県の中央に広がる 吉備高原 の南部、平均して標高300mほどの準高原にあります。まわりを大都市の明かり(岡山市・倉敷市・福山市など)から少し離れた高台にあり、街の光が夜空を照らし返しにくい。「光を漏らさない人の工夫」と「大きな光源から離れた土地の位置」――この二つがそろって、日本でも指折りの暗い夜空が守られています。土地の成り立ちは〈大地の物語〉、その上の人の営みは〈土地と人の営み〉でもどうぞ。


