吉備路の玄関口、総社市清音(きよね)に鎮座する軽部神社は、「乳神様」の愛称で親しまれる小さな古社です。JR清音駅からほど近い軽部山のふもとに社殿がたたずみ、安産や育児、女性の健康、良縁を願う人々が、静かに手を合わせに訪れます。
この神社をよく知られた存在にしているのが、拝殿まわりに奉納された、乳房をかたどった絵馬の数々。少し驚くような光景ですが、その一つひとつに「無事に子を産みたい」「母乳がよく出ますように」「子が健やかに育ちますように」といった、母となる人の切実な願いがこもっています。にぎやかな観光地とは違う、祈りのぬくもりが満ちた場所です。
拝殿まわりに奉納された絵馬見どころ
「乳神様」として親しまれる社
軽部神社の最大の特徴は、なんといっても「乳神様」への信仰です。かつて境内にあった「垂乳根(たらちね)の桜」と呼ばれる枝垂れ桜が、乳房にまつわる神木として敬われてきたと伝わります。その名残から、今も乳房の病気平癒や安産、育児の祈願が寄せられ、独特の絵馬が奉納される社となりました。
祈りがこもる絵馬掛け
拝殿のまわりには、参拝者が思いを込めて奉じた絵馬がずらりと掛けられています。手づくりのものも多く、素朴でありながら、そこに込められた願いの強さが伝わってきます。信仰の対象ですので、写真を撮るときも静かに、敬意をもって向き合いたい場所です。
清音のふもとの静けさ
社殿は軽部山のふもとにあり、田園とゆるやかな山なみに抱かれた、落ち着いた雰囲気。派手さはありませんが、そのぶん心を静めて手を合わせられる、こぢんまりとした神域です。
歴史と由来
社伝によれば、軽部神社の創建は建武元年(1334年)。福山城主であった大江田(おえだ)氏が、紀伊国(きいのくに)の熊野から神々を勧請し、軽部山の峯に社殿を営んだのが始まりと伝えられます。その後、火災や再建の歴史を経て、延宝6年(1678年)に現在の地へ移されました。明治2年(1869年)に「軽部神社」と改称し、今日に至ります。
祭神は、国常立命(くにのとこたちのみこと)、伊弉諾命(いざなぎのみこと)、天照大神(あまてらすおおみかみ)、事解男命(ことさかのおのみこと)、速玉男命(はやたまのおのみこと)。長い歳月のなかで、地域の暮らしと女性の祈りに寄り添い続けてきた社です。
お参りの楽しみ方
まずは拝殿でていねいにお参りを。安産や育児、女性の健康、良縁など、心に願うことをそっと手を合わせて祈りましょう。乳房型の絵馬は、手づくりで奉納する人もいれば、近くの施設などで用意された絵馬を用いる人もいます。願いを書き記して掛ける時間は、これから母になる人にとって、心を整える静かなひとときになります。
信仰の場ですので、ほかの参拝者への配慮を忘れずに。絵馬に込められた願いはどれも真剣なものですから、興味本位ではなく、敬意をもって静かに過ごしたい場所です。
実感メモ|家族で行くときのポイント
境内はコンパクトなので、お参りだけなら20〜30分ほど。妊娠中の方やお子さん連れで訪れる人も多い社です。参道や石段は足元がやや不安定なところもあるため、歩きやすい靴で、体調に合わせて無理のないペースで進みましょう。
アクセスは、JR伯備線の清音駅から徒歩圏内。車の場合は総社方面から向かうのが分かりやすく、周辺は道が細い箇所もあるので、ゆっくり運転を。駐車スペースは限られることがあるので、混み合う時期は時間に余裕をもって出かけると安心です。
あわせて回るなら、古代山城の鬼ノ城や、雪舟ゆかりの禅寺井山宝福寺など、吉備路の名所が同じ総社市内に点在しています。安産祈願のあとに、のんびり吉備路の風景をたどる半日コースもおすすめです。
※アクセス・参拝・授与品は変わることがあります。おでかけ前に公式でご確認ください。
情報確認:2026年8月 ※アクセス・参拝・授与品などは変わることがあります。おでかけ前に、公式情報での最新のご確認をおすすめします。



