岡山県の北のはて、鳥取との県境に近い鏡野町上齋原(かみさいばら)の山あいに、岩井滝はあります。周囲は氷ノ山後山那岐山(ひょうのせんうしろやまなぎさん)国定公園に含まれる深い森。落差はおよそ10メートル、幅はおよそ6メートルと、数字だけ見ればそれほど大きな滝ではありません。けれど、この滝には全国的にも珍しい特徴があります。
それは、滝の裏側へ回り込めること。岩がひさしのように大きく前へ張り出しているため、水のカーテンの内側に立って、流れ落ちる滝を「裏から」眺めることができるのです。こうした滝は「裏見の滝」と呼ばれ、正面から見るのとはまったく違う、水と光のあいだにいるような不思議な体験ができます。
滝の裏側から水のカーテン越しに外を望む見どころ
裏側へ回り込める滝
岩井滝いちばんの見どころは、やはり滝の裏へ入り込めること。正面から近づくと水しぶきと涼しい風が顔にあたり、さらに奥へ進むと、頭上を岩がおおい、目の前を水が流れ落ちていきます。しぶきに濡れた足元は滑りやすいので、ゆっくり慎重に。真夏でもひんやりとした空気に包まれ、森の緑と水音だけの静かな世界が広がります。
名水百選に選ばれた「岩井」の清水
滝から少し下流には、「岩井(いわい)」と呼ばれる清水が湧き出しています。この湧き水は、環境省が選んだ「名水百選」のひとつ。水温は一年を通しておよそ10度と冷たく、夏でも手を浸すとしびれるほど。豊かな森が長い時間をかけてろ過した水で、古くから人々に大切にされてきました。滝と名水がセットで楽しめるのが、岩井滝ならではの魅力です。
四季で表情を変える谷
周囲は豪雪地帯としても知られ、季節ごとに谷の姿は大きく変わります。夏は深い緑と涼しい水音、秋は色づく木々。厳しい冬には滝そのものが凍りつき、氷の造形が現れることもあります。標高の高い山あいなので、平地とは季節の進み方が少し違うのも面白いところです。
歴史と由来|岩井滝不動と子宝の伝説
岩井滝のそばには「岩井滝不動」として不動明王がまつられ、古くから信仰の場とされてきました。滝や湧き水そのものを聖なるものと感じ、そこに祈りをささげる――そんな山の信仰のかたちが、今も静かに受け継がれています。
この地には、子宝にまつわる言い伝えも残っています。長く子どもに恵まれなかった女性が岩井の不動に願をかけたところ、「岩井の水を飲み続けるように」というお告げを受け、そのとおりにしたところ、翌年に子を授かった――そんな物語です。名水の湧く滝は、涼を求める場所であると同時に、人々の切実な願いを受けとめてきた祈りの場でもありました。
楽しみ方|県北の自然とあわせて
岩井滝は、鏡野町の奥にある山あいのスポット。周辺には、渓谷美で知られる奥津渓や、川沿いの風情ある奥津温泉など、県北を代表する見どころが点在しています。滝で涼をとったあと、温泉でゆっくり体を温める――そんな組み合わせが、この一帯ならではの過ごし方です。
山や湧き水、渓谷、温泉と、自然の恵みがぎゅっと詰まったエリア。鏡野町エリアの見どころは鏡野町のガイドにもまとめているので、一日かけてゆっくり巡る旅の計画づくりに役立ててください。
実感メモ|おでかけの前に
岩井滝へは、駐車スペースから森の中の遊歩道を歩いて向かいます。道は山道で、水辺は濡れて滑りやすいので、歩きやすい靴がおすすめ。小さなお子さん連れの場合は、滝の裏や足場の悪い場所では必ず手をつないで、無理のない範囲で楽しんでください。名水を持ち帰りたい場合は、空のペットボトルなど容器を用意しておくとよいでしょう。
標高が高く、真夏でもひんやりするので、はおれる上着が一枚あると安心です。山あいのため、大雨のあとや冬の積雪期などは遊歩道が通行止めになることもあります。訪ねる前には必ず、道路や遊歩道の通行状況・最新の案内を確認してからおでかけください。
県北の奥まった場所にあるので、途中に売店や自動販売機が少ない区間もあります。飲み物や軽食は、ふもとの町であらかじめ用意しておくと安心です。※拝観時間・アクセス等は変わることがあります。おでかけ前に公式でご確認ください。
情報確認:2026年8月 ※アクセス・遊歩道の通行状況・季節の見ごろなどは変わることがあります。おでかけ前に、公式情報での最新のご確認をおすすめします。



