石碑や地蔵は、ただ過去を悼むだけのものではありません。「ここは、こういう災害が起こる土地だ」という、先人から未来へのメッセージです。この特集で歩いてきた岡山各地の記憶を、ここでは災害の種類ごとに並べ直してみます。種類が違っても共通するのは——土地の成り立ちを知れば、その土地の弱点が見えてくる、ということです。
高潮 ― 海すれすれの、干拓地
連島の千人塚
明治十七年(一八八四)の高潮は、海を埋めてつくった干拓地をのみ込みました。海面すれすれの低い土地は、高潮に対してとりわけもろい。多くの命が失われ、その数にちなむ塚が今も残ります。
洪水 ― 川があふれるとき
昭和九年の洪水線
昭和九年(一九三四)の室戸台風で、旭川があふれました。民家の壁には、水がどこまで来たかを示す「洪水線」が刻まれ、後世への警告となっています。
真備 ― 川が出会う場所
小田川が高梁川に合流する真備には、時代のちがう水害碑がいくつも残ります。合流点で起こる「バックウォーター現象」——この土地の地形そのものが、水害を繰り返させてきました。
地震 ― やわらかい地面が沈む
沖新田の干拓三百年記念碑
昭和二十一年(一九四六)の昭和南海地震で、江戸期の干拓地・沖新田は平均五十センチも沈下しました。海の底だったやわらかい地盤は、揺れると沈み込みやすい。高潮にも地震にも弱い、干拓地のもろさです。
ため池決壊 ― 恵みの水が、牙をむく
余河内の流れ地蔵
雨の少ない岡山は、農業用のため池を数多く築いてきた土地。その一つが嘉永三年(一八五〇)に決壊し、山里に大きな犠牲が出ました。水の恵みと脅威は、同じ場所に隣り合っています。
土砂災害 ― 斜面が崩れる
奥吉原の供養塔
昭和十三年(一九三八)、長雨で山陽本線の築堤(人がつくった斜面)が崩壊。列車の脱線・衝突で多くの命が失われました。人が土地に手を入れた所に、新しい弱点が生まれた例です。
栃原
平成十年(一九九八)の台風十号の豪雨で、山の斜面が一気にすべり落ちました。山と暮らしが近い地形は、恵みであると同時に、大雨のときの危うさと隣り合わせです。
共通するのは、"土地を知ること"
高潮は干拓地を、地震はやわらかい地盤を、洪水は川の合流点を、ため池決壊は山あいの集落を、土砂災害は斜面のそばを——災害は、それぞれの土地の"弱いところ"を正確に突いてきます。裏を返せば、自分の暮らす土地がどうできたのかを知ることは、そのまま防災の第一歩になるということです。
岡山各地の石碑は、その気づきを、何世代もかけて伝えてくれています。ぜひ、お住まいの地域の碑も訪ねてみてください。
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出典:国土地理院「自然災害伝承碑」。